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よくある質問

参考資料:契約関連のご相談

1.契約書を作成したい

書式を用いて、自分で契約書を作成する

  1. 書式のメリット
    契約書を作成する際,書式あるいは書式集を利用すれば,時間を節約でき,能率が上がるだけではなく,契約書の作成に慣れていない人にとっては,どのような事項を記載すれば漏れがないのか,どのような形式で作成すればよいのか,どのような言葉づかいで各条項を定めればよいのか,などが分かるので書式は有用であると言えます。もっとも,書式は万能ではなく,以下の事項に気を付ける必要があります。
  2. 新の書式を入手する
    法令は日々改正されるものであり,特に会社関係の法令は改正のスピードが早いです。商法だけを例にとっても,平成10年から平成20年まで9回も改正されており,何より平成18年には会社法が新たに作られています。このような状況では,書式も常に最新のものにアップデートさせておかなければ,現在の法令をふまえていない契約書を作成してしまうことになりかねません。
  3. 最も近い内容の書式を選ぶ
    契約書の書式集は多数出版されており,それらの中には100や200もの契約書の書式が収録されているものもあります。その中で,自分が作成したい契約書にもっとも近い内容の書式を選ばなければなりません。書式には契約書の題名が記載されているので,一見すると容易なことであるようにも思えますが,実際には例えば金銭消費貸借契約書の書式を見ても,貸金を一括で返済することが前提となっているもの,分割で返済することが条件となっているもの,連帯保証人がいることが前提となっているもの,いないことが前提となっているもの,など同じ題名の契約書の中でも様々な種類のものがありますので,適切な内容の書式を選択する必要があります。
  4. 書式を修正する
    契約の目的とその背景にある事実関係は千差万別であり,たとえ膨大な書式を持っていたとしても,あなたのケースにそのまま当てはまるような書式があるとは限りません。そこで,書式を部分的に修正し,場合によっては,複数の書式から抜粋して合体させるという作業も必要な場合があります。そして,書式を修正する場合は,契約書の基本的な構造を理解していることが望ましいです。

契約書の基本構造

  1. はじめに
    契約書を一から作成するのは,非常に大変な作業となりますが,その契約が特殊な契約であって,書式集を紐解いてみても適切な書式がどうしても見つからない場合は,書式に頼らずに契約書を作成しなければなりません。その場合,以下の契約書の基本的な構造に乗せて作成することにより,契約書としての体裁を整えることができます。
  2. 題名
    単に「契約書」「合意書」とするのでは,意味が少なく,また契約書の数が多くなってきた場合には,整理も困難となってしまいます。そこで,例えば「売買契約書」「金銭消費貸借契約書」のようにある程度具体的に題名を付けるべきです。もっとも,契約の内容は契約書の題名で決まるのではなく,あくまで契約書の本文の内容で決まります。
  3. 印紙
    契約の成立を証明する契約書には所定の印紙を貼らなくてはなりません。契約書を何通作成するのかによっても,印紙代は変わってきます。契約書を作成する際には,印紙についても注意しなければなりません。印紙がなくても契約は成立するのですが,印紙を貼らなかったために過怠税を負担しなければならなくなります。
    • ※ 印紙が必要な場合とは
      印紙税法が,印紙が必要となる契約書の種類を定めています。その種類として例えば,手形のように分かりやすいものもありますが,請負契約書のように判断が微妙となるものもあります。上記「2.契約書の題名」で記載したように,契約書の題名ではなく文言で決まるものなので,印紙の要否が不明確な場合は,専門家に相談した方が無難です。
  4. 前書き
    契約書の冒頭で契約の当事者を明らかにします。その一例として,「○○○○株式会社を甲とし,△△△△株式会社を乙として,次のとおり契約する。」と記載する場合や,「○○○○株式会社(以下,甲という)と△△△△株式会社(以下,乙という)の間で,次のとおり契約する。」などと記載する場合があります。
  5. 本文
    契約書本文には,次のような条項を入れるのが一般的です。
    • ア 目的条項
      本文の最初の条項(第1条)において,契約の主たる目的を記載します。例えば,第1条 甲は乙に対し,別紙物件目録記載の土地(以下,「本件土地」と言う。)を代金総額金○○万円で売り渡し,乙はこれを買い受ける。
    • イ 定義条項
      契約の内容が特殊で明確化を図る必要がある場合,本文で用いる用語の定義を明確にします。例えば,第1条 本契約において,次の各号に掲げる用語の定義は,以下に定めるところによる。「本件特許」とは,登録番号○○ー○○○○○○(出願公開日:平成○年○月○日)発明の名称「○○○○○○」に係る特許権をいう。
    • ウ 履行期限ないし存続期間
      売買契約などの1回限りの契約では履行期限,賃貸借契約・雇用契約などの継続的契約には存続期間の定めが必要です。例えば, 甲は乙に対し,平成○年○月○日限り,金○○○万円を支払う。
    • エ 履行方法
      債務の履行方法を明示します。例えば,甲は乙に対し,乙指定の銀行口座(銀行口座を本文に盛り込む方がベター)に振込む方法により,支払う。ただし,振込手数料は甲の負担とする。
    • オ 危険負担条項
      動産の売買契約などにおいて,一方の債務が債務者の過失によらずに履行不能になった場合,民法では特定物に関する物件の設定又は移転を目的とする場合は債権者(買主)が危険を負担するが,それ以外の場合は債務者(売主)が危険を負担することになっています。具体的には,前者の場合は買主は目的物を引き渡されなくても代金を支払う必要があり,後者の場合は買主は代金を支払う必要がありません。ただ危険負担に関する民法の規定は,任意規定なので契約条項でその適用を排除したり修正したりすることができます。
    • カ 担保責任条項
      契約目的物に瑕疵(不具合など)があれば,担保責任が生じます。具体的には,解除や損害賠償請求などを相手方に主張することができます。ただ,この担保責任も原則として任意規定なので,担保責任の内容を契約で定めます。
    • キ 期限の利益喪失条項
      期限の利益とは,所定の期限まで履行しなくてよいという債務者にとっての利益のことを言います。金銭消費貸借契約や継続的商取引の場合に盛り込んでおくべきなのが,一定の場合に債務者の期限の利益を喪失させる条項です。ここでいう一定の場合とは,例えば,
      ①乙が本契約に基づく債務の一つにでも,その履行を遅滞し,もしくは違背したとき(債務不履行)
      ②支払の停止,破産,民事再生,会社更生手続,会社整理,特別清算の申立てがあったとき
      ③手形交換所の取引停止処分を受けたとき
      ④仮差押,仮処分,強制執行,任意競売の申立て,滞納処分のあったとき
    • ク 損害賠償条項
      債務者が債務不履行した場合に備え,あらかじめ損害賠償額を定めておくと,損害額を立証しなくとも,その金額を賠償請求することができます。
    • ケ 書費用の負担
      その取引によって不可避的に発生する費用・公租公課をどちらが負担するのかを明示します。例えば,登記費用,不動産の公租公課などについて定めます。
    • コ 裁判管轄条項
      当事者間に紛争が生じた場合に,どの裁判所で裁判を行うのかを定めます。当然,あなたに近い裁判所または顧問弁護士の事務所に近い裁判所を定めておくと有利です。なお,「専属的」合意管轄としておくと原則として他の裁判所を排除できるので,その方がよいでしょう。
  6. 後書き
    契約書本文において契約内容を規定した後に,例えば「上のとおり甲乙間において合意したので,本書2通を作成し,甲乙各1通を保有する。」と記載します。契約書の体裁を整える意味と,契約書を何通作成したのかを明らかにします。なお,契約書を2通作成する場合は,それぞれにつき印紙が必要となります。
  7. 目録
    物件の表示を記載して対象物件を特定します。例えば契約目的物が土地の場合,①それが土地である旨,②所在,③地番,④地目,⑤地積を記載します。この表示は契約条項中に表記するか,あるいは別紙としてつづった物件目録に表記し,それを引用するという方法をとります。
  8. 作成年月日
    後書きの後,当事者の署名捺印の前に,当該契約書の作成年月日を記載します。場合によっては,消滅時効の起算点となるため,重要な記載です。
  9. 当事者の署名捺印
    契約当事者がそれぞれ署名捺印します。契約書を2通作成した場合は,2通ともに署名捺印します。「署名と記名の違い」については,「契約書をチェックしたい」を参照してください。この署名捺印の際に,どちらが「甲」でどちらが「乙」であるかも明示すべきです。

弁護士に依頼するメリット

  1. 当事者(依頼人)の利益確保
    契約は利害関係が対立する双方の当事者の法律関係について定めるものですので,当事者の力関係によっては一方当事者にとって有利なもの,あるいは不利なものもありえます。しかし,契約書のひな型は双方の当事者にとって中立的な立場から作成されていますので,当事者の力関係を正確に反映できていない場合があります。弁護士に契約書の作成を依頼した場合,当事者の関係も考慮に入れて契約書を作成できるので,より実態に沿った契約書を作成できます。例えば,依頼人であるあなたが相手方に対し契約書の原案を提示できる立場にある場合,依頼人であるあなたにとってなるべく有利となるような条項を盛り込むこともできます。
  2. 特殊事情の反映・適切な修正
    契約を締結する場合には,個々のケースに応じて様々な背景となる事情がありますが,当然のことながら契約書ひな形はそれらを考慮に入れていない場合が多いです。弁護士が契約書を作成する場合は,背景となる特殊事情をヒアリングして契約書を作成しますので,より実態に即した契約書にすることができます。例えば金銭消費貸借契約書の書式は大抵,借りた金銭を分割して返済することが前提となっており,期限の利益喪失条項が盛り込まれていますが,貸金を一括で返済することが合意内容となっている場合には,その書式を修正しなければなりません。そして一か所を修正すると他の条項との調和も必要となってきます。弁護士に依頼したならば,特殊事情を盛り込みつつ,適切な修正を図ることができます。
  3. 条項の明確化により将来のトラブルを回避する
    契約書のひな型は,例えば債務の履行方法について「当事者間の協議の上,決定する」と定めている場合がありますが,これは債務の履行方法には様々なものがあり,ひな型を作成した者が特定しきれないため,当事者に内容を埋めてほしいという意図で,あえてこのような形にしてあるものです。しかし,ここをひな形のままにしておくと,将来紛争が生じた場合にトラブルになりかねません。弁護士に契約書作成を依頼することにより,条項を極力明確化し,将来のトラブルを回避できます。

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