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よくある質問

参考資料:取締役の責任・株式譲渡

2.株式譲渡
  1. 株式はどのような方法で譲渡できますか。
    株式は自由に譲渡することができるのが原則です(株式譲渡自由の原則)。株式の譲渡方法は,株券発行会社の場合は,譲渡する旨の意思表示と共に,株券を譲受人に交付することによって行います。株式を譲り受けたことを会社に対抗するためには,譲受人は株主名簿に記載・記録する必要があります。一方,株券不発行会社の場合は,株式を譲渡する旨の意思表示のみによって,株式は移転し,会社その他第三者に対抗するためには,株主名簿への記載・記録が必要になります。
  2. 株券発行会社と不発行会社はどのように区別されますか。
    定款の規定によります。従来は,株券を発行することが原則でしたが,平成16年の会社法改正により,株券を発行しないこともできるようになりました。むしろ,定款に株券を発行する旨の定めがある場合に限り,株券発行会社とされることから,現在は株券不発行会社が原則形態とされています。なお,会社法改正前に株券を発行しない旨の定款規定のない会社は,法律上,株券を発行する旨の定めがあると見なされます。
  3. 株券の電子化について説明してください。
    株券の電子化とは,「社債,株式等の振替に関する法律」により,上場会社の株式などに係る株券をすべて廃止し,株券の存在を前提として行われてきた株主権の管理を,証券保管振替機構(いわゆる「ほふり」)及び証券会社などの金融機関に開設された口座において電子的に行うこととするものです。これが平成21年1月5日から実施されました。株券電子化の対象となっている株式の株券は無効となりますが,従来の株券は回収されません。今後は,株主としての権利が,証券会社などの金融機関の取引口座で電子的に管理されるようになります。 なお,株券電子化の対象は証券取引所に上場された株式に限られ,未上場の株式は対象外です。
  4. 株券が電子化された後の,株式の譲渡はどのような方法で行いますか。
    従来は,株券の交付の方法により行っていましたが,上場株式については今後は,本人で証券会社に取引口座を開設し,特別口座にある株式の残高を証券会社の取引口座に振り替えてから,譲渡することになります。
  5. 譲渡が制限される株式とは,どのような株式ですか。
    譲渡制限株式です。譲渡制限株式とは,株式会社がその発行する株式の全部または一部の株式の内容として,譲渡によるその株式の取得について,その株式会社の承認を必要とする旨の定めを設けている場合の,その株式をいいます。 同族会社など,株主の個性が重視される株式会社において,株式の譲渡を自由に許すと,株式には原則として議決権があることから,株式会社の経営が混乱するおそれがあります。それを避けるために,譲渡制限株式制度が会社法上設けられています。
  6. 譲渡制限株式を設けるためには,どのような手続が必要ですか。
    株式に譲渡制限を付けるためには,定款で,その株式を譲渡により取得することについて,その株式会社の承認が必要である旨を定める必要があります。また,一定の場合に承認したものと見なすこともできますが,その場合もその旨と一定の場合の内容について,定款に記載しなければなりません。
    会社設立当初から譲渡制限株式を設ける場合は,原始定款でその旨を定めることになります。一方,会社設立後に譲渡制限株式を新たに設ける場合は,定款変更が必要になります。
    定款変更するためには,株主総会の特殊決議が必要です。特殊決議とは,議決権を行使することができる株主の半数(定款で半数より上にすることも可能),かつ,その株主の議決権の3分の2(定款で3分の2より上にすることも可能)以上の多数で議決することをいいます。
    なお,会社法において特定の種類株式について譲渡制限の有無・内容につき異なる定めをおくことができるようになりました。例えば,優先株についてのみ譲渡制限を付けることもできます。
  7. 定款による譲渡制限以外に,株式譲渡が制限される場合がありますか。
    以下の場合に制限されます。
    • ① 時期による制限がある場合
      会社成立前または新株発行前の株式引受人の地位を譲渡する場合,当事者間ではその譲渡は有効とされますが,譲渡の効力を会社には対抗できません。また,株券発行会社では会社成立後または新株発行後でも,株券発行前における株式の譲渡は,当事者間では有効ですが,譲渡の効力を会社には対抗できません。
    • ② 子会社が親会社の株式を取得することが制限される場合
      子会社は親会社の株式を取得することは原則として禁止されます。よって,ある株式を持つ者は,その株式を会社の子会社に対して譲渡することが原則として禁止され,他の譲受人を探さなければなりません。もっとも,証券会社を通じて株式を譲渡したい場合は,さほど問題はありません。
    • ③ 自己株式の取得が制限される場合
      会社が自社の株式を譲り受けることができるのは,譲渡制限株式の譲渡等承認請求において,譲渡を承認しない場合に株式会社による買取りが請求された場合などの場合に限られます(会社法155条)。もっとも,その株式を発行している会社以外の者には譲渡できます。
    • ④ 契約によって制限される場合
      会社と株主との間の契約,あるいは株主相互間の契約によって,株式の譲渡を制限する場合もあります。会社と株主の間で契約した場合の効力については,争いがありますが,株主の譲渡の自由に対する過度に強い制限とならない限り有効とされるばあります。また,株主相互間の契約による場合は,有効とされる場合が多いです。
  8. 定款による制限がある場合の譲渡方法を教えてください。
    以下の手続によります。
    • ① 会社に対して承認請求する
      株式を第三者に譲り渡そうとする株主は,会社に対し,その譲渡につき承認をするか否かの決定をすることを請求することができます。その承認請求の際には,①譲り渡そうとする株式の数,②譲り受ける者の氏名・名称・会社,③承認しない場合は指定買取人がその株式を買い取るように請求するときはその旨を,明示して承認請求しなければなりません。なお,この承認請求は株式を譲り受けようとする者も,会社に対してすることができます。
    • ② 承認請求後の会社の対応
      承認請求を受けた会社は,譲渡を承認するか否かの決定をし,その決定内容を承認請求した者に通知しなければなりません。請求の日から2週間以内に通知がされない場合,会社は譲渡を承認したものと見なされます。承認するか否かを決定する機関は,原則として取締役会設置会社においては取締役会です。それ以外の株式会社においては株主総会が決定しますが,定款で一定の属性の取得者に対する譲渡については,代表取締役に決定させる旨を定めることもできます。
  9. 会社が株式譲渡を承認しなかった場合はどうなりますか。
    譲渡の承認を請求した者(あなた)が,会社が承認しない場合に会社または指定買受人による買い取りを請求したか否かで以下のように場合分けされます。
    • ① 会社または指定買取人による買い取りを請求した場合
      会社は自ら買い取ることの決定又は指定買取人の指定をしなければなりません。会社又は指定買取人は,会社が譲渡承認をしない旨通知したときから一定期間内に,承認請求者に買い取る対象株式の数などを通知しなければならず,この通知をしない場合は,譲渡を承認したものと見なされます。また会社は,この通知に先立って,1株当たりの純資産額として省令に定める方法により算定された金額に対象株式数を掛けた金額を供託し,供託したことを証明する書面を承認請求者に交付しなければなりません。
    • ② 他の者による買い取りを請求しなかった場合 この場合は,会社から会社が買い取る旨の通知または指定買取人の指定はされません。結局承認はされずに終わり,株式を譲渡したい者は,他の譲渡の相手方を探して再度会社に対して承認を請求するか,あるいは譲渡を諦めることになります。
  10. その株式会社または指定買受人が株式を買い取ることになった場合,買取価格はどのように決まりますか。
    買取価格は,承認請求者と会社または指定買取人との間の協議によって決まります。ただし,その協議の期間は会社からの通知があった日から20日以内に限られており,その期間内に承認請求者・会社・指定買取人のいずれかが裁判所に対して売買価格決定の申立てを行った場合は,裁判所が価格を決定します。一方,その期間内に申し立てもされず,かつ,協議も成立しなかった場合は,上記の会社が供託する金額によることになります。

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