参考資料:不動産の法律問題
4.取り扱い事例・よくある事例
取扱事例
- 建物明渡請求訴訟
- 民事調停
よくある事例
-
農地を宅地に変更するケース
農地(登記簿上の地目と実際の状況が田・畑になっている土地)を宅地に変更する場合は,農地を転用する手続をとります。手続としては,管轄の農業委員会から転用の許可を受ける必要があります。また,農業委員会から許可を得ただけでは,土地の登記簿上の地目が変わるわけではありませんので,法務局で地目変更登記の手続をする必要もあります。 -
法外な原状回復費用を請求されるケース
例えば,建物を借りて退去するに際して,風呂場が汚れて風呂場を丸ごとユニットバスに変える必要がある,として何十万円と請求されるケースがあります。風呂場が汚れたのが,借主の過失で傷を付けたなどによるのではなく,単に老朽化による場合は,借主にユニットバスに変えるための費用を負担する必要はありません。それはリフォームにあたり,貸主が負担すべきものです。 -
建物明渡で,賃借人(占有者)が行方不明のケース
賃借人がいないのですから,賃貸人としては賃借人の荷物・家財道具を運び出して,強制的に明渡を行い,次の賃借人に部屋を貸したいところです。ところが,日本の法律は自力救済を禁止しています。賃借人の荷物・家財道具は賃借人の所有物ですから勝手に処分すると,不法行為になってしまいます。
そこで,一つの手段としては,公示送達で建物明渡請求訴訟を提起し,その訴訟の中で賃貸借契約を解除し建物明渡について勝訴判決を取得し,建物明け渡しの強制執行をするという手段があります。この場合,賃借人の居場所が分からないのですから,公示送達により送達を行います。公示送達とは,裁判所の掲示板に出頭すれば書類をいつでも交付する旨を掲示することで,掲示を始めて2週間で相手方に書類が送達されたという効力が生じる送達方法をいいます。訴訟をする場合,訴状を被告となる者に送達しなければならず,大抵は被告の住所地が分かっているので,その住所地に郵送で送達すれば足ります(送達は裁判所が行います)。ところが,被告が所在不明などで住所地が分からない場合は,郵送などの手段で送達ができないため,送達の最後の手段として設けられたのが公示送達です。
ただし,この方法は手間がかかるため,賃借人の保証人・親族に連絡をとって,賃借人を探す努力をして,賃貸人あるいはその代理人に連絡がとれたのならば,賃貸借契約の解除の意思表示をすること,および賃借人の荷物・家財道具を引き揚げさせるか,書面でその所有権の放棄をさせることが現実的です。どうしてもやむを得ない場合に公示送達を用いて訴訟提起することになります。 -
自分がマンションを買った後に値下げされて販売されたケース
近時,不動産業界の不況によりマンションの販売価格が下落傾向にあります。ある買主がマンションの1室を購入した後に,売主が売れ残っている部屋を値下げして販売した場合に,当初の価格で買った買主は売主に対して損害賠償請求できるでしょうか。このような事案で,売り主側は買主となった者に対し,「本件マンションは購入希望者が多く、将来値上りが期待できる物件であるから値引き販売は絶対にしない。」「本件マンションのうち一か所を値引くと他も値引かなければならないから値引き販売はできない。」などと言った事実が認定されましたが,裁判所は,「これらをもって、原告らと被告との間で、売買契約締結に当たり、値引き販売をしないという合意、又は、値引き販売をした場合には原告らに損失を補償するという合意が成立したとは認められない。」と判断した上で,「一般に、不動産の価格は、需要と供給の関係で決まるものであり、不動産市況によって価格が変動することは自明の理ともいうべきことであるから、マンションの販売業者である被告に、売買契約締結後に不動産市況の下落があってもなお当該販売価格を下落させてはならないという信義則上の義務があるとは認められない。」とし,結局は買主から売主に対する損害賠償請求は認めませんでした(東京地判平成8年2月5日)。