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よくある質問

参考資料:不動産の法律問題

2.土地建物の明渡し
  1. 土地建物の明け渡しを求める場合とは,どのような場合ですか。
    借主に土地建物を貸したが,借主が賃料を払わないために賃貸借契約を解除し,土地建物の明け渡しを請求したい場合や,自己が所有する土地建物を不法占拠しておりその明け渡しを請求したい場合などに,土地建物の明け渡しをどのように実現できるのかが問題になります。
  2. 明け渡しを実現するにはどのような方法がありますか。
    ①任意交渉する,②民事調停を申し立てる,③訴え提起前の和解をする,④訴訟を提起して勝訴した上で強制執行する,⑤占有禁止の仮処分を申し立てる,などの方法があります。ただ,①任意交渉するとしても,まずは訴え提起して相手方に圧力をかけてから交渉に臨んだ方が,交渉を有利に進められるので,まずは訴え提起するのがよいでしょう。また,訴え提起しても強制執行をするのには費用がかかるので,訴え提起して裁判上での和解を試みるという方法もあります。
  3. 訴え提起するとして,どのくらい費用がかかりますか。
    まずは,裁判所に納める印紙代がかかります。所有権に基づいて建物明渡訴訟を提起する場合,建物の価額(固定資産税評価額)の2分の1が訴額になります。この訴額がいくらかによって,印紙代が決定します。例えば,固定資産税評価額が3000万円だとすると,6万8000円の印紙が必要です。これに郵券が6400円(当事者が1:1の場合),それに弁護士に委任する場合は弁護費用もかかります。
  4. どこの裁判所に訴え提起すればよいですか。
    管轄は,被告の住所地を管轄する地方裁判所,またはその不動産の所在地を管轄する地方裁判所です。
  5. 訴え提起するに際して注意しておくべきことは何ですか。
    占有移転禁止の仮処分を検討すべきです。土地建物の借主に対して,賃料不払いを理由に賃貸借契約を解除して明け渡しを請求する場合,借主を被告として訴え提起します。ところが,訴訟中に被告である借主が土地建物の占有を第三者に譲渡した場合,仮に借主に対して勝訴判決を得たとしても,現に土地建物を占有する第三者に対して判決の効力は及びません。その結果,現に土地建物を占有する第三者に対して明け渡しの強制執行することもできなくなり,訴訟は結果として無駄に終わることになります。そこで,そのような事態を避けるために,訴訟を提起する前に占有移転禁止の仮処分を行うのです。
  6. 占有移転の仮処分にはどのような効力がありますか。
    占有移転禁止の仮処分の効力が及ぶ者に対しては,仮に当初の占有者から他の占有者に目的物の占有が移転したとしても,明け渡しの強制執行を行うことができます。 また事実上の効力として,占有移転禁止の仮処分を申し立てることにより,交渉で解決しなかった事件が解決する場合もあります。占有移転禁止の仮処分は執行官が目的物に赴き,占有移転禁止を公示しますが,その仮執行に申立てをした本人あるいは代理人も同行することにより,仮処分を申し立てたことの心理的プレッシャーを相手方に与えつつ,相手方と直接話し合うこともできるからです。
  7. 占有移転禁止の仮処分の効力はどの範囲の者に及びますか。
    占有移転禁止の仮処分の効力は,この仮処分執行後に占有を承継した者に対しては,その承継した者が仮処分の執行されていることについて知っているか,知らないかを問わずに,その効力が及びます。また,承継することなく占有を取得した第三者に対しても,その者が仮処分について知っていた場合は,効力が及びます。なお,仮処分執行後に占有を取得した者は,執行がされたことを知っていたものと法律上推定されます。 逆に,債権者(仮執行を申し立てた者)に対抗することができる権原により目的物を占有する者に対しては仮執行の効力が及びません。例えば,土地建物が二重譲渡された場合に債権者より先に所有権移転登記を備えた買い受け人などがこれに当たります。また,仮処分の執行をあったことを知らなかった者で,債務者から承継することなく目的物の占有を取得した者にも効力は及びません。
  8. 仮処分の申し立てが認められるためには,どのような要件が必要ですか。
    占有移転禁止の仮処分を申し立てるための要件は,①被保全権利があること,②保全の必要性があることです。
    ①被保全権利は,相手方に対する物の引渡請求権または明渡請求権であり,これが存在することが必要です。この権利は,所有権に基づくものでも,債権(賃貸借契約終了に基づく目的物返還請求権)でもよいです。
    ②保全の必要性とは,債権者が権利実行できなくなるおそれまたは著しい困難が生じるおそれがあることを言います。具体的には,債務者が既に目的物の建物を転貸しようとしており不動産業者に仲介を依頼し,その広告が打たれている場合などがこれに当たります。この事情を詳細に申立書に記載します。仮処分の審査は書面審査ですので,申立書の記載でどれだけ説得力を持たせられるかが重要になります。そこで,弁護士に依頼するメリットがあるわけです。
  9. 仮処分の申し立てのためには,担保を建てる必要があるとのことですが,担保の金額はどのくらいですか。
    申立てが認められたとしても,債権者は担保を納めなければなりません。これが納められないのならば,申立の意味がなくなってしまいます。そこで,担保の基準を示します。これはあくまで目安です。
    ※右から左のスライドで更に、右情報が見えます。
      債務者使用の場合 執行官保管のみの場合 債権者使用の場合
    土地建物の価格 1%~5% 10%~20% 20%~30%
    住居の賃料相場価格 1~3か月分 12か月分 18か月分
    店舗の賃料相場価格 2~5か月分 12か月分 18か月分
    担保額を決めるに当たっては,目的物(土地・建物)の価格を基準に決める場合と,賃料相場価格を基準に決める場合があります。また,執行の方法として①目的物を執行官が保管し,債務者による使用を許す場合(表の左),②執行官が保管し債務者に使用を許さない場合(表の中),③執行官が保管し債権者が使用する場合(表の右)があり,それぞれで担保額の目安が異なります。
  10. 裁判上の和解について教えてください。
    裁判の見通しとして,こちらに有利な場合はそのまま判決をもらってもよいですが,強制執行には費用と手間と時間がかかることを考えると,裁判上の和解で決着をつける方法もあります。相手方が弁護士を代理人として立てている場合は,相手方も裁判の見通しを立てるため,和解が成立しやすいとも言えます。また,裁判上の和解で結論を出した場合の方が,判決で結論を出した場合よりも,その後の履行がされる確率が高いです。裁判上の和解については,和解調書が作成されるため,万がいつ相手方が履行しない場合でも,和解調書を債務名義にして強制執行することもできます。
  11. 相手方が任意に履行しない場合,強制執行はどのように申立ますか。
    目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に対し,債務名義の正本(判決書の正本など),執行文,送達証明書などを添付して書面で申立ます。
  12. 強制執行はいきなり行われるのですか。
    執行の前に,執行官は債務者に対して明け渡しを催告することもできます。基本的に1ヶ月後の日を期限として催告します。
  13. 強制執行はどのような方法で行われるのですか。
    執行官が強制的に債務者の目的物の占有を排除して,債権者に引き渡します。債務者が建物の中に物品を置いているときは,中の物品を取り除いた上で,債務者の占有を排除します。
  14. 強制執行には,申立をした私自身も立ち会う必要がありますか。
    申立人が弁護士などの代理人を立てていない場合は,申立人自身が立ち会う必要があります。代理人を立てている場合は,代理人が立ち会えば足ります。

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