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テレワークに関する労務管理上の注意ポイント

2021年01月18日

●テレワークに関する労務管理上の注意ポイント

 テレワークを導入するにあたり、労務管理上注意すべきポイントについて説明します。

  1. テレワークを行う場所

     テレワークは、ネット環境とパソコンさえあれば場所にとらわれず働けてしまうことから、企業が想定しないような場所で業務を行う労働者も出てきます。
     街中で利用できるフリーWi-Fiの中には、接続するとパソコン等のデータが覗き見られてしまうというというものもあり、危険です。
     また、カフェなど人の出入りが多い場所で、機密性の高い情報をパソコン等で見ている、後ろから覗き見られてしまうというリスクもあります。
     そのため、テレワークを行う場所は、自宅又は使用者が指定した場所に限定すべきです。

  2. 労働時間の把握

     みなし労働時間制が適用される労働者や労働基準法第41条に規定する労働者(管理監督者など)を除き、使用者はテレワークを行う労働者についても労働時間を適正に把握する責務を負っています。
     原則として、タイムカードやパソコンのログなど客観的な記録に基づいて把握するか、使用者が自ら現認して確認することが求められます。
     ただ、テレワークでは、原則的な方法で労働時間を確認することが難しく、労働者の自己申告によって労働時間を把握せざるを得ない場合もあります。
     自己申告によって把握する場合には、単に労働時間数を報告させるだけでなく、業務内容も記載させることによって、過少・過大申告がなされていないかをチェックできるようにします。そして、労働時間の自己申告を受けた場合には、使用者側でもおかしなところが無いかきちんとチェックを行い、後でトラブルにならないようにします。

  3. 中抜けの時間の取扱い

     テレワーク(特に自宅で行う場合)を行う場合には、中抜け(業務から離れて私用を行う時間)が発生しやすいとされています。
     中抜けの時間が生じた場合、ノーワークノーペイの原則に従い当該中抜けの時間分の賃金は控除することができます。しかし、中抜けの時間が5分、10分に過ぎない場合には、いちいち欠勤控除の計算を行う方が大変であることから、中抜けした時間分だけ終業時刻を繰り下げることを認めて、不就労控除をしなくても良いようにするためのルールを設けておくことが考えられます。
     ただし、無制限にこれを認めてしまうと、所定の就業時刻を守らなくなり企業内秩序を乱したり、勝手に中抜けをしてしまい業務に支障を来す可能性があります。そこで、終業時刻の繰り下げを認めるか否かは使用者側で最終的に判断できるようにしておくべきです。

  4. 時間外労働等の許可制

     テレワークでは、使用者が常時労働者を監督できるわけではないことから、時間外労働、深夜労働及び休日労働を規制しておかないと、勝手に労働者が時間外労働等を行い、割増賃金を請求してくるというトラブルが発生しかねません。
     そのため、テレワークを行う労働者については、原則として時間外労働等を禁止しておき、時間外労働等を行わなければならない場合には、事前に申請をしてもらい使用者側で内容を精査して許可をするというルールを作っておくべきです。

  5. 事業場外みなし労働時間制

     事業場外みなし労働時間制とは、労働者が事業場外で業務に従事した場合に、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間(又は当該業務の遂行に必要な時間)働いたものとみなす制度です。
     テレワークを行う場合に、事業場外みなし労働時間制を適用するためには、次の2つの要件のいずれも満たす必要があります。
    ①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
    ②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと。(具体的な指示には、当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することは含まれません。)

  6. 費用負担

     テレワークを行う場合、通信費や水道光熱費などの費用負担を使用者と労働者のどちらが負担するのか決めておく必要があります。
     テレワークを行うにあたり業務に個人の携帯電話を利用する場合、通話料金は使用者(会社)負担とする企業が多いです。これに対して、インターネット回線利用料金や水道高熱費は、個人での利用と業務で利用を区分できないことから、労働者側の負担とするか、一定額を手当として支払う企業が多いです。

  7. セキュリティ対策

     テレワークではセキュリティ対策が問題となります。特に労働者個人のパソコン等で業務を行うことを許可する場合には、少なくともウイルス対策ソフトを入れることや、データを個人のパソコンには保存しないなどのルールを定めておくことが必要です。
     また、使用者がパソコン等の機器を貸与する場合には、労働者が使用者の許可を得ずにソフトやアプリケーションをインストールしてしまうことを禁止するなど、貸与機器の使用に関するルールも定めておくべきです。なお、セキュリティ対策の参考資料として総務省作成の「テレワークセキュリティガイドライン」があります。

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