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新型コロナウイルスの影響で従業員を休業させた場合の休業手当について

2020年12月16日

●新型コロナウイルスの影響で従業員を休業させた場合の休業手当について

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が続いており、従業員を休業させなければならない事態も出てきています。
 労働基準法では、使用者の責めに帰すべき事由により休業させた場合には、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないとされています。
「使用者の責めに帰すべき事由」とは、民法上の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く、使用者側の経営管理上の障害で不可抗力に該当しないものは全て含むと解されています。
 もっとも、具体的にどのような場合に休業手当の支給が必要となるかは、非常に分かりにくいため、以下では、5つの具体例を挙げて休業手当の支給の要否について説明します。

  1. 新型コロナウイルスに感染した(検査結果で感染が確認されている状態)従業員を休業させた場合
  2. 従業員が新型コロナウイルスに感染した疑いがある(検査結果で感染が確認されていない状態)ため、使用者が自主的な判断で当該従業員を休業させた場合
  3. 発熱などの症状がある従業員が自主的判断で休業した場合
  4. 新型コロナウイルスに感染した従業員がでたため、保健所の指示で事業所を消毒するために封鎖されたことから、他の従業員を休業させた場合
  5. 原材料の調達に支障を生じたため、工場の操業を一時停止して、従業員を休業させた場合
  1. の場合

     新型コロナウイルス感染症は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症予防法」といいます。)における「指定感染症」に指定されています。感染症予防法では、都道府県知事が指定感染症にり患した者の就業を制限できることとなっています。
     都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
     ただし、在宅勤務制度があり、新型コロナウイルスに感染した従業員が在宅勤務を行える場合には、在宅勤務を行わせずに休業させると、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当する可能性があるので、注意が必要です。ここでいう「在宅勤務を行える場合」とは、当該従業員が在宅勤務の可能な業務を担当していること及び当該従業員の体調面で在宅勤務を行うことに問題がないことの双方満たす場合を意味します。

  2. の場合

     使用者が自主的な判断で、新型コロナウイエルスに感染した疑いのある従業員(職務の継続が可能な者に限ります。)を休業させた場合、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられますので、休業手当を支払う必要があります。

  3. の場合

     発熱などの症状がある従業員が自主的判断で休業した場合は、休業手当の支払いは必要なく、通常の欠勤と同様に取り扱えば足ります。
     ただし、就業規則に病気休暇など有給の特別休暇が定められており、その付与条件に該当する場合には、特別休暇として処理する必要があります

  4. の場合

     保健所など公的機関の指示により事業所を閉鎖せざるを得なくなったことにより、従業員を休業させた場合、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
     一方で、公的機関の指示ではなく営業自粛の要請である場合には、従業員を休業させることを最終的に決定したのは使用者であることから、の場合と類似した状況になります。そのため、この場合には、休業手当を支払った方が安全です。

  5. の場合

     原材料の調達先など取引先の事業停止に伴う休業が、不可抗力に該当するか否かは、当該取引先への依存度、代替手段の可能性、取引先の事業停止からの経過期間、使用者として休業回避のために行った具体的対策等を総合的に考慮して判断するとされています。
     具体的には、当該原材料の調達先が他にないといった特殊な事情がある場合には、不可抗力と判断される可能性があります。
     しかし、そうでない場合には、取引先の業務停止を原因とする休業は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられますので、休業手当を支払う必要があります。

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