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パワーハラスメント対策
2020年09月15日
●パワーハラスメント対策-
パワーハラスメントを行った社員の懲戒解雇が有効とされた裁判例(東京地裁判決平成28(2016)年11月16日)
事業主に義務付けられる雇用管理上の措置の一つとして、事業主の方針の明確化及びその周知・啓発することが想定されています。上記裁判例のように、パワーハラスメントを行うと最悪の場合には懲戒解雇されることもあることを、従業員に周知・啓発しておくことは、雇用管理上の措置を講ずる義務を果たすという意味だけでなく、パワーハラスメントを防止する上でも有用です。
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パワーハラスメントを受けた社員が自殺してしまい、社員と会社に多額の損害賠償が命じられた裁判例(福井地裁判決平成26(2014)年11月28日)
被害者であるAは、高校卒業後新卒採用で正社員として当該会社に入社しており、勤続1年に満たない社員でした。Aは上司Xからの叱責を苦に自殺をしました。
上司のXは、Aに対して注意する際に、「毎日同じことを言う身にもなれ」「反省しているふりだけ」「辞めればいい」「死んでしまえばいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」という発言を度々していました。
裁判所は、「これらの発言は仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Aの人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントと言わざるを得ず、不法行為に当たると認められる。」と判断しました。
そして、パワーハラスメントを行っていたXだけでなく、会社も使用者責任(民法715条)があるとして、X及び会社に対して、連帯して約7300万円の賠償金の支払いが命じる判決が出されました。パワーハラスメントは上記裁判例のように深刻化してしまうと、尊い人命が失われ、会社は多額の損害賠償義務を負う可能性があります。そのためパワーハラスメントは、深刻化する前に早期に発見し適切に対応することが重要です。
ところが、それから1年余り後に、新たに配属されてきた部下のC及びDに対して、「お前はセンスがない」「お前の生き方は間違っている」と言ったり、部署のミーティングへの参加を禁止するなどの行為を再び行いました。これにより、Cは他の部署に異動を希望し、Dは適応障害を発症し傷病休職を余儀なくされました。
Xは、会社からの事情聴取に対して、C・Dを叱責したことは認めたものの、叱責は指導のために必要であったとして、自らの行動に反省すべき点は無いと回答しました。
この回答を受けて、会社はXに改善の見込みがないと判断して懲戒解雇を行いました。 Xは、懲戒解雇が無効であると争いましたが、裁判所は次のように述べて懲戒解雇を有効と判断しました。
「厳重注意処分を受け、顛末書まで提出したにもかかわらず、その1年余り後に再度C・Dに対するハラスメント行為に及んでおり、短期間に複数の部下に対するハラスメント行為に及んだ対応は悪質である。
また、Cは別の部署に異動せざるを得なくなり、Dは適応障害に発症し傷病休職を余儀なくされるなど結果は重大である。
会社との面談や裁判での本人尋問でも、部下への指導として正当なものであったとの態度を一貫して変えず全く反省する態度が見られないことから、Xの部下に対する指導方法が改善される見込みは乏しいと判断せざるを得ない。
したがって、Xは、部下を預かる上司としての適正を欠く。」