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団体交渉開催地を理由とする団体交渉拒否による不当労働行為の成否について
2016年04月08日
中央労働委員会命令平成28年3月14日【平成27年(不再)第11号】
事案の概要
使用者の所在地が東京都、労働組合の所在地が石川県という、両当事者が遠隔地に所在をしていました。
第1回の団体交渉は使用者の希望により、使用者の所在地である東京都内で行われ、その団体交渉の中で、労働組合から第2回以降は団体交渉を東京都内と石川県内で交互に開催することを提案が行われましたが、使用者が東京都内での開催を強く主張したため、団体交渉の開催地について合意には至りませんでした。
後日、労働組合が、東京都内と石川県内の交互開催を前提としつつも、第2回団体交渉に限り、使用者の要請があれば東京都内での開催に応じる意向を明らかにしたが、使用者は上記主張を譲りませんでした。
そこで、労働組合は、第2回団体交渉申入れにおいては石川県内を開催場所として指定したが、使用者は自らの主張に合理性がある旨回答するのみであったので、不当労働行為救済申立を行いました。
中央労働委員会の判断
「上記の一連の経緯に鑑みれば、従業員組合側が団体交渉の場において相応の合理性があると評価できる提案をし、また、事後にはそれなりの譲歩をしているのに対し、使用者側は団体交渉において相手方の提案を検討する姿勢もなく、後日においても自らの主張を繰り返すのみで、提案を受け入れられない理由を十分説明しているとは到底いえない。使用者のこのような対応は、従業員組合側からの提案としては相応の合理性のある従業員組合の交互開催という提案を真摯に検討することなく、東京都内での団交開催という自らの見解に固執したというべきであって、対等な団交当事者としての従業員組合を軽視して第2回団交申入れに応じなかったものといわざるを得ない。」として、労組法第7条第2号の正当な理由のない団交拒否に当たると判断しました。
ポイント
上記事案では、両当事者が遠隔地に所在しているにもかかわらず、使用者が使用者の所在地で団体交渉を行うことに固執することは、労働組合側が遠隔地に出向かなければならないという不利益を一方的に負担することになるので、合理的理由のない団体交渉場所の指定であると判断され、それを理由とした団交拒否は不当労働行為に当たるとされました。
しかし、団体交渉のルール設定(日時、交渉時間、出席者など)において労働組合側の要求が優先されるなかで、団体交渉を行う場所については、使用者が指定した場所が労働組合側にとって特別に不便がない限り、その指定した場所以外で団体交渉に応じないとしても、正当な理由ある拒否として不当労働行為に当たらないと解されています。
裁判例(大阪地裁判決昭和62年11月30日労働判例508号28頁)でも、「(団体交渉の開催場所について)合意の整わない場合において使用者が一方的に就業場所以外の場所を指定したとしても、そのことに合理的な理由があり、かつ、当該指定場所で団体交渉をすることが労働者に格別の不利益をもたらさないときには、使用者がその場所以外での団体交渉に応じないとすることをもって不当労働行為にあたると解すべきではない。」と判示されています。