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横浜地裁判決平成25年4月25日
40回以上の契約更新をしてきた有期雇用労働者との契約を終了させるため,会社が最後の更新時に「今回をもって最終契約とする」旨の文言が記載された労働契約書を作成し,当該契約書に有期雇用労働者の署名押印を得ました。そのため,会社は合意により契約が終了したものと扱いましたが,当該有期雇用労働者が労働契約上の地位の確認を求めた訴訟で,裁判所は,当該有期雇用労働者が労働契約を終了させる明確な意思を有していたとは認められないとして合意による契約の終了を認めず,雇止めが行われたという認定を行いました。
ポイント
上記裁判例では,労働契約を終了させることは著しく不利益なことであるから,労働契約を終了させる合意があったと認めるためにはその旨の労働者の意思が明確でなければならないと解すべきであるとの判断基準を示しました。
そのうえで,当該有期雇用労働者は,「今回をもって最終契約とする」旨の文言が記載された労働契約書に署名押印する際に特段の申出や質問をしなかったが,雇用継続を望む労働者にとっては労働契約を直ちに打ち切られることを恐れて使用者の提示した条件での労働契約の締結に異議を述べることは困難であると考えられることに照らすと,これらの事情(署名押印する際に特段の申出や質問をしなかったこと)だけでは,当該有期雇用労働者が労働契約を終了させる明確な意思を有していたと認めることは出来ないと判断をしています。
つまり,労働者に不利な合意をする際には,合意したという形式だけでなく,労働者の真意がどうであったのかということを裁判所は非常に重視していることが,この裁判例からわかります。
労務管理上の対策
労働者の真意は,上記裁判例のように契約の終了の場面だけでなく,賃金の減額の場面でも問題となることが多いです。
労働者と合意をする場合,合意を書面で残すことは当然ですが,それだけでなく充分に時間をかけて丁寧に内容を説明するなどして,会社側の意向を労働者に押し付けたと言われないような手続を行っておくことが,後々紛争になることを予防し,万が一紛争になった場合に合意を無効とされないための対策として有用であると考えます。