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ピンチのときこそ冷静に
2014年02月24日
先日、裁判に関し教訓になる話を聞きました。 原告に有利な書面の証拠が少なく尋問が唯一頼りと思われる事案です。裁判所は、原告に和解を勧めましたが拒否されたので、原告本人と被告本人の尋問を行うと決定しました。 被告本人は尋問に際し、通常より時間を要してしまうという事情がありました。原告代理人は、裁判所に対し、このような事情のある被告に対しては十分な反対尋問ができないとして被告本人の尋問取消を求めました。原告代理人は、尋問に手間がかかるので反対尋問の時間を延ばして欲しいといえば足りるはずですが、被告本人の尋問がなくなれば原告に有利になる可能性があると考えたのかもしれません。尋問当日、裁判所は、まず原告の尋問を行いました。反対尋問の中で、原告の証言の矛盾点が明らかになりました。裁判所は、原告の尋問が終わったのち、被告の尋問を突然取り消し直ちに判決を出すことにしました。 裁判所の意図は、『原告本人への反対尋問で原告の供述の信用性が完全に崩れているので、被告本人の尋問を経なくとも被告勝訴の判決が書ける』、『原告代理人が被告本人の尋問取消を求めるなら反対尋問権の放棄なのだから言うとおりにしてあげる。文句ないでしょう』、『せっかく和解も勧めたのにそれも拒否しているのだから判決しかありませんね』ということなのです。 原告代理人とすれば、有利な書面による証拠が少ない事案なら、原告本人の尋問に全力を傾注し立証を成功させ、万が一に備えて和解の途も残しておくべきでした。(それができない事情があったのかもしれませんが)
自分が不利な立場にあるとき、それを打開するために十分な見通しを立てずに奇策に頼るのは危険です。ピンチのときこそまず冷静に足元を固めるべきです。これは、裁判だけではなく、日常生活やビジネス一般にも通じることではないでしょうか。