労務トラブルを解決する

顧問弁護士.JP

よくある質問

参考資料:不動産の法律問題

2.不動産賃貸契約
  1. 不動産賃貸借にはどの法律が適用されますか
    不動産賃貸借には,民法・借地法・借家法・借地借家法の適用があります。民法はすべての賃貸借契約に適用されます。また,平成4年8月1日以降に締結された賃貸借契約には借地借家法の適用があります。平成4年8月1日より前に締結された賃貸借契約には借地法・借家法の適用があり(平成4年8月1日以降に更新されたものも含む),賃貸借契約の存続期間,更新期間,更新拒絶通知及び解約申入れについては借地法・借家法の規定によります。 また,借地借家法は,建物所有目的の土地賃貸借及び,一時使用目的以外の建物賃貸借に適用があります。
  2. 土地賃貸借契約はどのように更新されますか。
    土地賃貸借契約の期間が満了した場合,その契約を更新するか否かが問題となります。更新には当事者の合意に基づいて更新される合意更新と,当事者の合意に基づかない法定更新があります。
  3. 合意更新について教えてください。
    土地賃貸借契約は当事者の合意に基づいて更新でき,これを合意更新と言います。契約期間は当事者が定めなかった場合で借地借家法が適用される場合は,初回の更新ならば20年,2回目以降の更新ならば10年です。当事者が20年より長い賃貸期間を定めることもできます。
    また,借地法が適用される場合は,堅固建物(石造り,土造り,煉瓦造りなど)の場合は30年,非堅固建物については20年です。
  4. 法定更新はどのような場合に認められますか。
    借主が貸主に対し更新を請求し,建物が存在する場合は,貸主が遅滞なく異議を述べない限り従前と同じ内容で契約が更新されます。また,借主が更新を請求しなくとも借主が土地の使用を継続し建物が存在する場合は,貸主が遅滞なく異議を述べない限り,やはり従前と同じ内容で契約が更新されます。また,貸主の異議には正当事由がなければなりません。
  5. 正当事由はどのような場合に認められますか。
    正当事由は以下の事情を総合判断してその有無が認定されます。ケースバイケースですが,正当事由が認められる方向の事情が,否定される事情より強ければ認められやすくなります。正当事由が認められる方向の事情が弱い場合は,高額の立退き料を支払うことで正当事由が認められやすくなります。
    • ア 正当事由が認められる方向の事情
      ①賃貸人自身の使用の必要性があること
      ②建物が老朽化しており,取壊しや建替えの必要性があること
      ③賃貸借契約成立時の事情,その後の事情
      ④立退き料の提供
    • イ 正当事由が否定される方向の事情
      ①借家人自身,または転借人の使用の必要性があること
      ②賃貸借契約成立時の事情,その後の事情
  6. 建物賃貸借契約はどのように更新されますか。
    土地賃貸借と同様に,合意による更新と法定更新があります。
  7. 建物賃貸借の合意更新について教えてください。
    建物賃貸借を合意で更新した場合は,契約期間は最長で20年であり,1年未満の期間を定めた場合は期間を定めなかったものと見なされます。契約期間を定めなかった場合やそのように見なされた場合は,解約申し入れの対象となります。
  8. 建物賃貸借の法定更新はどのような場合に認められますか。
    当事者が期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の意思表示をしなかった場合,または契約条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかった場合は,従前と同じ内容で契約を更新したものと見なされます。また,貸主から更新拒絶の通知がなされた場合であっても,借主が借家の使用を続けているのに,貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合も同様です。
    ただし,期間の定めがないものとされ,解約申し入れの対象となります。なお,貸主の更新拒絶の通知には正当事由が必要とされます。正当事由の内容については,土地賃貸借の更新拒絶と同じです。
  9. 解約申し入れとは何ですか。
    建物賃貸借で,期間の定めがない場合または定めがないと見なされる場合は,当事者は双方とも申し入れによっていつでも建物賃貸借契約を終了させることができ,これを解約申し入れと言います。ただし,貸主の側から解約申し入れをする場合には,正当事由が必要とされ,しかも賃貸借契約が終了するのは解約申し入れの日から6か月後です。正当事由の内容については,土地賃貸借の更新拒絶と同じです。
  10. 賃料を契約期間の途中で値上げ・値下げできますか。
    契約で定めた以上,賃料を契約の途中で一方的に値上げ・値下げできないのが原則ですが,当事者で合意した場合は契約内容を変更できます。のみならず,裁判により賃料の値上げ・値下げをすることができる場合があります。
  11. 裁判で賃料を変更する場合,どのような手続によりますか。
    賃料増減請求にあたっては,いきなり訴訟を提起することはできず,まずは調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。調停で不調となった場合に,訴訟を提起します。
  12. 裁判になった場合,どのような判断で賃料の増減が決まりますか。
    訴訟においては,以下の事情を総合判断して賃料を値上げ・値下げするかを判断します。
    • ① 土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減
    • ② 土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動
    • ③ 近傍同種の建物の借賃の比較
  13. 賃貸借契約終了時に貸主から原状回復を求められましたが,どの範囲まで負担しますか。
    一般論としては,借主は契約終了時には賃貸物を返還する義務があり,借主の保管義務に違反する使用により生じた損害は賠償する義務がありますが,通常の使用による減耗については修理・回復費用を負担する義務はないとされています。例えば,日焼けした畳の交換代金は借主が負担する必要がありません。もっとも,「本契約締結時の原状に回復しなければならない」の記載が契約書にあった場合は,通常の使用による損耗・汚損をも除去し,賃借当時の状態にまで原状回復して返還しなければならないかについては争いがあります。
  14. 建物を退去する際,契約締結時に入れた敷金を返還しないと賃貸人に言われたのですが,返還を求めることはできないのですか。
    敷金とは,不動産特に建物賃貸借の際,賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭のことを言います。賃借人が賃貸人に賃料を支払わなかったり,建物の原状回復が必要となり賃借人がこれを負担する場合に,賃借人の負担額が差し引かれて,建物明け渡し時に返還されます。
    建物の賃貸借においては契約で原状回復は賃借人の負担とされているのが一般的です。どんなにきれいに使ったとしても,ルームクリーニング代金は負担させられるので,全額は戻ってこないことが多いです。ただ,返還金額が不当に低い場合は争うべきです。
  15. 定期借地権とは何ですか。
    定期借地権とは,契約期間の更新がない借地権のことを言います。定期借地権でない通常の借地権の場合は,更新拒絶のために正当事由が必要となるため,貸主によってはいったん貸した物件がなかなか戻ってこない,という現状がありました。そこで,貸主のメリットのために定期借地権という制度ができました。定期借地権には,次の3種類があります。
    • (1) 一般定期借地権
      存続期間は50年以上とされ,期間満了後は,土地を更地にして返還しなければなりません。期間満了時に地上建物に借家人がいる場合のために,借地権の終了時に借家契約も終了する旨の特約を締結することが許されています。また,借地権の終了を知らなかった借家人には1年間の明け渡し猶予期間が認められています。借地の利用目的に制限はありません。この一般定期借地権を設定する場合は,公正証書などの書面で契約が締結される必要があります。
    • (2) 事業用定期借地権
      もっぱら事業の用に供する建物(居住の用に供するものは含まれません)の所有を目的とし,かつ,存続期間が10年以上50年未満であることが必要な定期借地権を言います。この事業用定期借地権の設定のためには,公正証書による定めが必要です。一般定期借地権の場合は公正証書である必要はないのですが,事業用定期借地権の場合は公正証書である必要があります。事業用定期借地権で,30年以上50年未満の場合は,建物買取請求権を排除する特約をすることができます。また,10年以上30年未満の場合は,建物買取請求権を排除できるのみならず,更新後の建物の再築に関する裁判所の許可も排除することができます。
    • (3) 建物譲渡特約付定期借地権
      存続期間は30年以上で,期間満了時に借地上にある建物を相当の対価で,地主に売却するとの特約を付けた定期借地権です。建物譲渡特約付定期借地権だけは書面によることを要しませんが,書面による方が無難といえます。この定期借地権は,ディベロッパーが土地を借り,そこにマンションを建てて30年間で家賃収入を得た後に,地主にマンションを売却するなどのために用いられます。
  16. 一般定期借地権,建物譲渡特約付定期借地権において,公正証書などの書面によらなかった場合はどうなりますか。
    この場合は,一般の借地権としての効力しか認められません。すなわち,法定更新の適用があり,更新拒絶するためには正当事由が必要となります。
  17. 定期借家権とは何ですか。
    定期借家権とは,契約期間の更新がない借家権のことを言います。その意味で定期借地権と同じ性質を持ちます。賃貸人としては正当事由の有無で悩む必要がなくなります。
  18. 定期借家契約を締結する場合の注意点は何ですか。
    • (1) 書面で契約を締結し,その契約内容として「契約期間の満了により当該建物の賃貸借は終了し,更新はない」旨をきていしなければなりません。なお,書面は公正証書である必要はありません。
    • (2) 契約締結に先立って,賃貸人は賃借人に対し,当該建物の賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了によって終了することを書面で説明しなければなりません。この書面による説明は,借地借家法38条2項が「あらかじめ」の説明を要求していることから,契約書とは別の書面による説明を求めていると解されます。
    • (3) 賃貸期間が1年以上の定期借家契約においては,期間満了の1年前から6か月前までの期間に,賃貸人が賃借人に期間の満了により契約が終了する旨を通知しなければなりません。この通知を期間満了の6か月前より後にした場合は,通知の日から6か月後に契約が終了することになります。

ページトップへ